ー2019年3月20日 12:30頃
ニッパチが死んでしまった。
「ニッパチが、死んだ」
こうして文字に起こしてみると、ものすごく違和感を感じる。言葉で表現できない気持ちが沸き起こる。頭の中がゴチャゴチャして、目の前が揺れ始める。
実感がない。
実家に帰れば、「ニャー」なんて言って勢いよく階段を駆け下りてきそう。
こっちが疲れるくらい元気よく猫じゃらしで遊んでそう。
いつも走り回っていたニッパチ。

でも、拾ったあの日は、今にも消えそうなくらい縮こまっていたなぁ。
ダンボールの中の命
ー2016年11月6日。
携帯に通知が来た。
「誰か猫飼わん?」

バイト先の店長が猫を拾ったようだ。
バイトのライングループに投稿された写真の中のその子は、汚くて、小さかった。
店長が1匹で縮こまっているところを保護したらしい。
興味本位、ちょっとした好奇心。
そんな発言をしたその時の僕は、多分命を預かるってことがイマイチ分かっていなかった。
その一言で、「正道よろしくぅ」となり、
なんと翌日の出勤日に猫を受け取った。
ダンボールに入った小さい茶トラの子猫。名前はニッパチ。バイト先が280円均一の居酒屋なので、ニッパチ。店長が名付けた。
星が綺麗な帰り道、「大丈夫だよ、暴れないで」そう言ってもダンボールの中で暴れるニッパチ。
自分の思い通りにいかない小さな命を感じて、「あぁ、ひょっとして僕、すごく大きな決断をしたのかもしれない」なんて思った。

ちなみに連れて帰ってすぐ、カーペットにお漏らしされました。

家族になった
初めてのご飯。

初めてのトイレ。

そういえば、トイレはすぐ覚えたね。
段々と心を開いてくれて、服の中に入ってきたね。

胸の上で寝てきたね。

首輪買ったけど大きすぎたね。

一週間も経つと、まくらの上で超リラックス。

でも、僕がベッドに入るとすーーぐ、くっついてくる。

ブログ書いてる時も邪魔してくるし。

ココアこぼしたり、綿棒ばら撒いたり・・・。

君のせいでカーペット買い換えたよ。
初めて実家に連れて帰った日、先輩猫に睨まれてたね。笑

歳が近い黒猫モモちゃんの後をよく追いかけてたな。

母さんに変な服着させられてたなぁ。

卵が気になる?

新しいトイレも買った。

キャットタワーも買った。

バイト代はニッパチに貢いでばっかり。
こんなに可愛いから仕方がないよな。

やっぱり、家族で飼うのと一人暮らしで飼うのは全然違った。
僕一人がお世話の全部をするだけじゃなく、一日中家にいる猫のことを気にかけてた。
長時間友達と遊びにもいけないし、バイトも長い間入るとかわいそうに思う。
猫を捨てる人は本当に許せなかったけど、正直イライラして、捨てたくなる日もあったし、邪魔に思うことも多かった。
それでも可愛くて、怒る時もあったけどやっぱり仲良しな僕ら。
そうして、いつの日か、ニッパチと僕は家族になった。

大家族
一緒に過ごして数ヶ月、ニッパチは実家で暮らすことになった。

実家で猫2匹と僕の家族に囲まれて、3匹の中で一番人懐っこいニッパチは家族にも大人気だった。
母さんはツイッターでニッパチのアカウントを作り始めたし、缶バッチも作ってた。
伯父さんが僕の妹を起こしに行く時、「ニッパチ行くぞ」と言ったらついて行くんだとか。
雪がたくさん降った日、他の2匹は外に出る前にドアで止まったけど、ニッパチはそのまま飛び出したんだとか。
たまに実家に帰った時は、ニッパチが可愛すぎて、写真や動画をいっぱい撮った。

最期の日
突然だった。
「ニッパチの調子が悪い」って家族がざわつき始めて、
猫白血病を発症していることが発覚した。
母猫から遺伝していたっぽい。
ニッパチ元気かなぁ、なんて心配したけど、実家にいるしイマイチ実感が湧かなかった。
実家に帰った時ガリガリになってるのを見て、ようやく実感。

歩く体力もなく、ずっと寝たきり。水も飲まさないといけない、食べ物も口に運ばないといけない。
でも、「いつか回復するだろう」って思ってた。
心のどこかで「大丈夫」って思ってた。
今は少し体調が悪いだけ。だから早く元気になって。

ちゃんとご飯も食べて。水も飲んで。

猫白血病発症後の僕が帰った時、ニッパチは弱い力で立ち上がって、僕の膝に乗ってきた。
実家を離れる時、「これが最期になるかもしれない」なんて、冗談混じりで言いながらニッパチに挨拶した。
「元気になれよ!食べて飲んでよく寝るんだぞ!」
そう言って頭を撫でておでこにキスをした。
その数日後、ニッパチは死んだ。

僕とバイバイしてからほんの数日のことだった。
その日は朝から体調が悪かったらしく、動画内で撫でられたニッパチの顔は今にも消えてしまいそうだった。
どこかに行こうとしたのか…立ち上がって歩くけど、後ろ足が動かずこけてしまい
最期にか細く「ニャー」と言っていた動画があった。

最期の瞬間、妹の側にいたニッパチは、一粒の涙を流したらしい。
ニッパチは…
どんな最期だったんだろう。

ねぇニッパチ。
店長に拾われて、僕に連れていかれて、ずっと僕と一緒にいて、実家で初めて他の猫と出会って、僕と離れ離れになって、今度は大家族に囲まれて…
ニッパチはどんな猫生だった?

幸せだった?

拾ったのが僕で良かった?

いい猫生だった?


ニッパチは最期の瞬間、何を考えながら迎えたの?

2歳半で死ぬなんて。早すぎるよ。この前までこんな小さかったじゃん。

玄関まで迎えに来てたじゃん。

それがどうして?
どうして死んじゃったの?
どうしてニッパチなの?
最期の瞬間、一緒に居たかったよ。
最期に、ちゃんと「ニッパチと出会えて幸せだったよ」って言いたかったよ。

ニッパチのことを思うと、涙が止まらない。
どうしようもなく寂しい。
翌日、ニッパチは埋葬されました。
ニッパチ、今まで、ありがとう。
みんなを笑顔にしてくれて、ありがとう。


苦しい病気とよく闘ったね。ゆっくり休んでね。
ニッパチは死んでしまいました。
また、会えるかな。ニッパチ。
驚くぐらいショックです。「一緒に死にたい」なんて人生初の感情を抱きました。
僕の寿命を分けたいです。
頭の中で言葉がどんどん溢れて来て、すごくまとまりのない記事になってしまいました。すみません。
ニッパチ日記はこれにて、完全に終わりです。
これまでのニッパチ日記をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。
今までありがとうございました。